【アクティブラーニング】 教師による一方的な授業形態と異なり、学習者を能動的な学びへ誘う教授法。学習者は、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ。知識を丸暗記する今までの学習と違い、学びの質が高まることが期待されています。 |
今流行りのアクティブラーニング。
私も現在、高校生たちに数学を教えていますので、そこで実践してみての気づいた問題点と、自分のやり方をお伝えしようと思います。
【問題点1】形だけで実態が伴わない
アクティブラーニングの言葉の流行に伴い、グループで話し合う形の授業が多くなりました。
課題を与えて、それぞれのグループが考えて結論を導き出す。
ときには別のグループに協力してもらったり、グループが解散したり。
課題解決という目標に向かって一人一人が問題に取り組んでいく。
まさに学習の理想の形に見えます。
そして、これを目指して多くの先生たちが、アクティブラーニングのやり方を真似をしています。
ただ、真似ることは悪くないのですが、実態がアクティブラーニングになっているかどうかは別の話です。
アクティブラーニングは「課題の発見や解決に向けて主体的に学ぶ」学習方法です。
グループ学習がそのままアクティブラーニングになっているわけではありません。
主体的に考える癖のついていない生徒にとっては、教えてくれる相手が先生から友達に変わっただけです。
また、もともと数学のできる生徒は、講義形式の授業でも主体的に問題を解く癖がついていますので、グループ学習にしたところで変わりません。
数学の場合、形だけマネしてもアクティブラーニングにはならないんです。
(他の教科は実践していないので分かりません)
【問題点2】課題の発見方法を学んでいないのに丸投げされる
小学校の図工で、絵を描く授業がありますが、「先週行った動物園を思い出して絵を描いてみましょう」なんて言われて描いた記憶がある人も多いのではないでしょうか?
しかし、それでは絵は上手く描けるようになりません。
絵を上手く描けるようになるには、まず他の絵の模写からです。
模写の次は実物を見て。
頭の中のものを描き出すのは最後のステップです。
課題の発見も同じです。
発見するにはコツがあります。
しかし、それを学んだことのある生徒はほとんどいませんし、先生もよく分かっていないことが多いです。
そんな状況で先生は、“生徒の主体性”なんて魔法の言葉を使って放り投げる。
はっきり言って、それは無理です。
結局のところ、課題発見に慣れた生徒が問題を見つけ、それを他の人と共有するだけです。
自分で課題発見できない生徒は、誰かの答えを待っているだけです。
もしも、課題発見の授業を実践するのであれば、実際によく考えているのが何人いるか数えてみると良いでしょう。
【問題点3】形だけで評価されやすい
アクティブラーニングを形だけで見るのは、評価者や保護者も同じです。
グループワークをやっている様子を見ただけで、「あぁ、アクティブラーニングをやっているな」なんて誤解する人がとても多いです。
逆に、講義形式の授業でしっかり生徒が主体的に考えているのに、「それはアクティブラーニングではない」なんて評価されることもあります。
しかも、「講義形式の授業ではなくアクティブラーニングをしなさい!」なんて指導されてしまいます。
まずはアクティブラーニング評価者が、その本質を知り、形式だけで評価しないようにする必要があります。
【問題点4】情報量が少なくなる
知識を身につけるには、講義形式の授業の方が効率的であることも意識しておかなくてはいけません。
数学でグループ学習を取り入れると3問しか進められないところ、講義形式なら10問は進められます。
すでに能動的に学ぶ習慣がついている人にとっては、「問題を解いて分からないポイントを明確にし、解説でそこだけ聞いて、また問題を解く」という方がはるかに効率的です。
また、あまり理解できていない子も「途中で詰まって考えてる気分になる」よりも、効率的に流れを理解できます。(定着するかどうかは復習するかによる)
アクティブラーニングを取り入れるのであれば、基礎知識を身につけるための授業なのか、主体的に考える力をつけるための授業なのか、授業目的を明確にして実践しましょう。
【問題点5】学校の授業だけで終わることが多い
アクティブラーニングのメリットは、「主体的に考える力を養うことで日常生活でも考えるようになり、学習効果や仕事効率が高まる」ことです。
しかし、ほとんどの生徒にそのような時間はありません。
昔なら、道草くってるときに様々な発見をし不思議を見つけてきましたが、習い事やゲームに時間を取られ、主体的に考える時間がある生徒はほとんどいません。
今の生徒にとって、「勉強とは学校(塾)だけでするもの」になっていることを覚えておきましょう。
アクティブラーニングをするのであれば、生徒が布団に入っているときに「あぁ、そうか!!」なんてひらめくように工夫し導いてあげてください。
【実践方法】数学のアクティブラーニングはこうやった
生徒の状況に合わせて、やり方は色々あると思います。
ただ今回は、自分がいくつか実践した中で、もっとも良かったものをお伝えしたいと思います。
数学のアクティブラーニングで大事なのは、「生徒に自分で考えさせること」。
これにつきます。
で、考えさせるにはどうしたら良いか。
それぞれの生徒にあった課題を渡して、あとは放置です。
答えを教えてはいけません。
生徒は答えを教わった瞬間、なんとなく分かった気になり、次も教えてもらえるのを待ちます。
現代の子どもは忙しく(テレビ・ゲームの刺激を含む)、とにかく労力のかからない方法を選ぶのです。
どうしても解けない生徒がいたら、ちょっとしたヒントを出してあげても良いですが、教えた瞬間考えなくなり“主体的な学び”はなくなることを覚えておきましょう。
さて。
難しいのは、生徒に合った問題選び。
中学生や高校生に向けて授業するのであれば、中学受験するような小学生が解いているパズルのようなものが良いと思います。(生徒のレベルによってはフェルマーの最終定理でも問題ありません)
基礎知識はあるはずですから、あとは自分で試行錯誤するだけ。
このとき、必ず考えたことを紙に書き出すようにしてもらいましょう。
場合によっては教え合いも良いですが、正直、数学のアクティブラーニングは、生徒に合った問題を渡すだけで大丈夫です。
ちなみに“正弦定理”のような知識は、講義形式で教えたほうが良いです。
P.S.
・分かりやすく教えるのが仕事
・黒板に何か書くのが仕事
そう考えて授業中に何もしないことに抵抗を感じる教員が多いですが、違います。
数学の授業についていえば、「数学ができるようになること」が第一目標。
そして同時に「主体的に学べたら良いね」ということで、アクティブラーニングです。
生徒が主体的に考えて数学ができるようになれるのであれば、教員はそれ以外なにもする必要がありません。
講義形式かグループワークかも関係ありません。
本来、数学はアクティブラーニングととても相性がいい科目です。
パズルやクイズは楽しんで解く人が多いため、テレビ番組にもなっているほどです。
大切なのはそれを上手く促すこと。
あなたが教員であるなら、ぜひ形にとらわれずに生徒の様子をしっかり観察して、アクティブラーニングを取り入れてみてください。
ちなみに私が勧める問題は『大人に役立つ! 頭がいい小学生が解いているパズル』のようなものです。
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