座学で高校体育・授業案⑥ ~スポーツ栄養学~

三大栄養素とは、糖質、脂質、たんぱく質のことで、どれも身体のエネルギー源になる物質です。

三大栄養素の1つである糖質は、身体のメインのエネルギー源となります。

通常、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられており、必要な時にグルコースに分解してエネルギーとして使います。

ただ、身体に蓄えられる量が限られており、糖質が補給できないと、半日から1日で枯渇してしまいます。

また、脳などの一部の組織は、ブドウ糖しかエネルギーとして利用できないため、貯蔵されたグリコーゲンが枯渇すると、集中力の低下や疲労感の高まりを招き、パフォーマンスを維持できなくなります。

糖がなくなってヤバイ!!

そこで活躍するのが、たんぱく質です。

糖新生といって、筋肉のタンパク質が分解されグルコースが作られます。

これにより、脳のエネルギー源を確保することができます。

ただし、筋肉が分解されてしまい、アンモニアという有害物質がでて肝臓に負担をかけるので、できるだけ避けたい現象です。

以上のことから、アスリートは運動前に糖質をとっておきグリコーゲンを溜めておくことと、運動中に糖質を補給することが大切になります。

ここで質問。

「タンパク質を分解しないためには、運動中にひたすら糖質を取れば良いじゃん」と思いませんか?

実は、運動中に補給できる量は限界があります。

まず、糖質の濃度が高いと上手く吸収できないため、小腸は吸収の際に、水分を出して薄めてから吸収します。

なので、糖質過剰による脱水が起きる可能性があります。

また、血糖値が上がると、インスリンが出てグリコーゲンをグルコースや中性脂肪に変えます。

この反応にエネルギーが必要となり、運動にエネルギーを使える量が減り、パフォーマンスが低下します。

なので、運動後は身体に欠乏した糖質をすぐに補い、糖新生を行うほど運動をした場合は、たんぱく質の摂取も重要になります。

ここで、もう一つ質問。

三大栄養素には脂質も含まれていました。

なら、「タンパク質ではなく脂質をエネルギーに変えれば良いと思いませんか?」

参照:https://www.rehabilimemo.com/entry/2021/04/24/083502

実は、脂質をエネルギーに変えるには酸素が必要です。

なので、酸素を十分に供給できないほど高強度の運動をすると、脂質でエネルギーを賄うことができなくなります。

それどころか、脂質をエネルギーに変えられる量は、運動強度55%程度が効率良いとされ、それ以上の強度だと、エネルギーに変えられる量が減少します。

つまり、中程度くらいの有酸素運動では、脂質をエネルギー源として使えるが、

酸素が足りなくなったり、糖質や脂質が足りなくなると、筋肉にあるタンパク質を分解して糖質を作り出さなくてはいけなくなるということです。

だから、運動後は糖質とタンパク質が大事になります。

もうひとつ質問。

糖質をたくさん取ればインスリンが分泌されて中性脂肪が作られる。

ならば、脂質は食べる必要がないのでは?

脂質を取るべき理由はいくつかあります。

1つ目は、糖質だけでエネルギーを取るのが大変であるということ。

同じ量を食べるとすると、脂質は糖質の倍のエネルギーを生み出すことができます。

なので、成長期の子どもがたくさん運動してる場合、脂質も摂取しないとエネルギーが足りなくなってしまいます。

2つ目は、脂溶性ビタミンが減少したり、必須脂肪酸が不足するということです。

水に溶けるビタミンと、油に溶けるビタミンがあるので、脂質を取らないでいると必要な栄養素が不足します。

3つ目は、脂質が細胞膜の構成成分になっていることです。

脂質が少ないと、骨膜炎や筋膜炎、肉離れになりやすいと考えられています。

ちなみに、脂質には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。

飽和脂肪酸のイメージは豚肉の脂身。

正確には違うが、常温で固形の油は、身体に取り込まれても固形の油として溜まっていき、血管などに悪さしやすいと覚えておくと摂取しすぎを防ぐ助けになります。

最後に3代栄養素のタンパク質を紹介。

タンパク質は、アミノ酸80個以上が結合したもので、消化するのに時間とエネルギーがたくさん必要になります。

運動中にエネルギー源となるのは、筋肉の7%を占める分岐鎖アミノ酸です。

脂質のところでも紹介しましたが、たんぱく質をエネルギー源として使うのは、運動強度が高くて酸素が足りないとき。

もしくは、運動時間が長くて糖質が足りないとき。

だから、長時間の運動のあとは、糖質だけじゃなくてタンパク質の補給も必要になります。

さて、もう一度質問です。

運動後にタンパク質を摂取して、子どもが胃腸炎になった理由は何でしょうか?

タンパク質の消化には時間とエネルギーが必要です。

運動でエネルギーが枯渇している身体に、糖質ではなくタンパク質を食べさせたら、胃腸に大きな負担がかかります。

そのため、消化不良となり、胃腸炎となったのです。

以上のことを踏まえ、長時間、高強度の運動のあとは、濃度4~8%の糖質をできるだけ早く摂取するのが一番です。

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